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人にとって作物とは?植物の存在とは?めぐり合わせで果樹栽培を営むことになった信州のとある農業者が思うこと
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今日はお菜洗い。
小雨が降ったり止んだりのひんやりした空気の中、すっかり身体が冷えてしまった。

前日母が収穫した野沢菜をよ〜く洗い、普通の「野沢菜漬け」と、お菜を細かく刻んで醤油と酢と砂糖で漬ける「お醤油漬け」を仕込み、3時間ほどで終了。昔に比べれば漬け込む量も少なくなったという。今でも親戚などに配る目的で大量に漬け込む人もいると聞くが、そういう人はめっきり少なくなってしまったらしい。

冬の風物詩でもあるお菜洗い。言われるがままにお手伝い感覚だったこの作業も、最近は母の感覚がすんなりと身体で感じ取れるようになり、時間をかけて受け継ぐことの楽しさが少しわかってきた気がする。

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ここ数日間、どうやら風邪をひいていた。

ドッと熱が出るわけでも咳が出るわけでもなく、じわじわとダラダラと頭痛や悪寒が続く。私の体調不良はいつもこんな感じ。3日目くらいに外の空気を吸うと気分が良くなる。少しずつ畑で身体を動かせばたいてい治っている。たまには身体に溜まった悪いもの(?)をドカッと出してスカッと治ってみたいのだが、私の身体はそういう方法をまず選ばない。

先日、農事録の担当者であるF氏とお酒を飲んだ。F氏よりも彼の父上との歳の方が近いという事実に愕然としながらも音楽や写真の話なんかで意外にも盛り上がった。本当はもっと違う方向の話をする予定だったのだが、それはまた次回にとっておこう。まずは今回の機会を作ってくれたF氏に感謝である。

その帰り道、最寄りの駅から自転車でびゅんびゅん飛ばして冷えたのがいけなかったのか。数日間でいろんな場所に行きいろんな人に会って解放的になりすぎたせいか。今年の収穫期のように、疲れも遅れてやって来た。



本年のすべての収穫を終え、ほっと一息つくこの頃。

落ち着いて掃除をし、欲しかった本を買い、友だちとお茶して。そんな何でもないようなことが解放感のあまり著しく楽しくて、新鮮だ。ま、これからの冬支度の作業は山ほどあるので遊んでばかりもいられないのだが...

今日は中野市に住む友だちに会いに行き、一緒に暮らす猫2匹とも対面。友だちに似て穏やかで可愛い彼らに遊んでもらってなでて触って大満足の午後を過ごした。いや、猫目当てで行ったのではないのだよ、決して(笑)

彼女(友だち)とは歳も離れているし仕事も趣味も違うのだが、話していると不思議と気持ちが和む。線が細くて可愛らしくて、時にとぼけたところもあって守ってあげたくなるような(私と対照的な)雰囲気の女性だが、その奥にある芯の強さと誠実さに、たぶん私は惹かれている。趣味が合うとか嗜好が似ているとか、そういったうわべ的な要素が、人が人を好きになる上でほとんど関係ないことが、ようやくこの歳になって(おくればせながら)わかってきた。人は、自分にないものを持った人に惹かれながらも、潜在的な共通項を感じ取るのだろうか。

その彼女のご主人とは仕事上の付き合いも多く、よく知った人である。が、いかんせんワーカホリックである。彼らを見ていると、数年前にある人が言った「夫婦なのに一緒にいる時間が短いって、もったいないよね。」という言葉を思い出す。それがまるっきり当てはまる彼らの暮らしぶりは、若い夫婦の”今"という時間の多くを犠牲にして成り立っている。

現状からの脱却を彼も努力している最中なのかもしれないが、少なくとも彼女はもっと違った"今"を過ごしてみたいと思っているだろう。その時期が早く来るといいね。その頃には一本気な彼の仕事ぶりがより幅を増して頼もしくなるに違いないし、お酒に飲まれて外で寝てしまうことも少なくなるだろう(笑)。それが私たち夫婦にとっても楽しみだ。

落ち着いたら四人でどこかに出かけよう。




『ブレても目ヂカラ』
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サンふじ2回目の収穫が終了。これにて直販分の発送を終える。温暖化の影響からか今年は良品が少ないため、注文分ギリギリの量だった。なんだかあっという間だ。

この赤いりんごともお別れなんだな、と思うとなんだか淋しい。

闘牛じゃないけれど、なんだかこう、りんごの赤にはムラムラとしてくるのだ。特に収穫初日などには心なしか気分が高揚する。次から次へと真っ赤な実を(中には真っ赤じゃないものもあるが)カゴへ入れながらも周囲の赤に目移りするほど、やや興奮状態で収穫をしていると言っていい。

二人で収穫する場合、実際に樹から実を穫る作業は私が担当することが多いので、運搬や選果を担当する夫にはこの感覚がいまひとつわからないようなのだが、きっとあの赤には動物的本能が働くのだろう。

これまでは「りんご=赤い」というイメージがあり過ぎてシナノゴールドのような黄色いりんごの地位がなかなか上がらないと思っていたが、きっと理由はそれだけではないのだ。もし黄色いりんごが広く受け入れられるようになってその味が好まれたとしても、赤い実には敵わないのだろう。真っ赤なイチゴとかトマトとか。赤い色には「おいしそう」と思わせる効果があるのかもしれない。

ただ、赤にもいろいろある。黄味を帯びた赤か、青味のある赤か。それによってサンふじの味も違うのでご用心を...



農事録が掲載されました。→第11回農事録長野県のおいしい食べ方

今回はりんごの話をメインにしたが、同号の記事にりんごがらみが多くなかなかタイムリー?な農事録になった。農事録もあと1回を残すのみ。最後はどうしても気合いが入りそうだが、言葉のシロートが気合いを入れたところであまり良いことはなさそうなので、これまで通り気持ちだけは込めたいと思う。



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管理人(ハナイ)
長野県須坂市に住む。夫と共に果樹の世話をして収穫して出荷・販売することが仕事。栽培品目はもも・プルーン・りんご・ぶどう・アスパラガス。趣味はMac、写真、庭に訪れるレア度の低い野鳥の観察、CSで撮りためた日本映画を夫と観ること。仕事以外はわりとインドアである。
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