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人にとって作物とは?植物の存在とは?めぐり合わせで果樹栽培を営むことになった信州のとある農業者が思うこと
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サンふじの発送を終え、収穫もあと1回を残すのみとなった。今シーズン最後の収穫である。核果類の収穫は振り返る余裕もないが、りんごは最後だけあって、どうもこう、しみじみとしてしまうな。

瞬く間に過ぎ去った収穫期。今年もいろいろあった。今年は特にいろいろあった!!霜害・長梅雨・猛暑...。だが、今年のすべてを振り返るにはまだ早い。

このあたりは山のように獣の害こそないが、鳥の害は多い。今年はりんごがやたらと鳥サンにつつかれてしまう。それを防ぐためにりんごの樹に網をかけたりCDをぶら下げたりするのだが、今日もりんご畑に様子を見に行ったら「あぁ...引っかかってる...網に...ヒヨドリが...」

ざっと見回っただけで5羽も引っかかっていたので、もしかしたら10羽ぐらいいるのか。たいていは見つけた時にはすでに暴れた疲労で死んでしまっている。ただ、今日は1羽だけ生きていて(これがまたやっかいではあるが)まわりの網をはさみで切り取り外してやった。外してやっても飛べず、樹の根元にうずくまったままだった。相当もがいた後だったのだろうか、ふぅふぅと息が上がっている様子。何とか回復して飛んで行ってくれたなら良いが...

毎年のことではあるが今年の多さは異常。理由はわからないが、あたりのりんごも残り少なくなって、鳥たちも生きるのに必死で網をも恐れず畑に入ってくる。普段、畑の虫を食べてもらったりしているのにこういう時だけ網で防いでしまって、ごめん。

明日、埋葬しよう。



「お譲り下さい」継続中
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作業はサンふじの葉摘み・玉回しが一段落した。他のくだもの同様、1週間ほど遅れているようだが、朝晩の冷え込みで着色も進んで来たように感じる。

毎年のことだけれど、この玉回しが本当に嫌い。

1105.jpgりんごは日光が当たる面から赤く色付いてくるので、この玉回しをしないことには全面がなかなか赤くならない。着果の位置によっては何もしなくても真っ赤になるりんごもあるが、たいていは回さないと片面がうっすらと赤いままである。

りんごの熟度を判断するにあたって大事なのはこの赤色ではなく、地(下地)の黄色味が濃いかどうかである。人間で言うとお化粧の下の「素肌」みたいなものかな。早熟なりんごは見た目が赤くても地色が「黄緑色」。熟したりんごとは下地の色が違う分、表面の赤がそれぞれ微妙に違うのである。購入する人はこのへんの違いを是非知ってもらいたい。

基本的に果実は日光に当たっている方が美味しいと思うので、葉摘みや玉回しも悪いことではないと思う。ただ、「りんご=赤い」というイメージがあまりにも浸透していて、りんごの善し悪しは、まず色が赤いかどうか。日本はずーっとそんな市場なのである。葉っぱや枝の陰など、日光の当たらない部分は本当なら地色がわかりやすく、買う側の判断材料になる。だが、そういうりんごは評価されない仕組みになっている。
※糖度センサーなどを用いた評価もある

着色管理の作業は相当な時間になる。ここまで手をかけるのは日本の農家だけだ。ここまでしているのに近年のりんごの安いこと。そして、この作業の間に何個のりんごをハシゴ(三脚)で傷つけ、落としたりんごは何個か。せっかく育ったりんごを落としてしまうこと。それが、玉回しが嫌いな一番の理由である。

全面真っ赤じゃなくてもいい!うまいりんご食わせろ!運動

なんてものが消費者の間で起これば(笑)売り手重視の作り方も変わるのかもしれない。その前に消費者も現実を知らなければならないが。そして、知ってもらうためには私たちも何かをしなければならない。こうしてブログで書くこと以外の方法がまだ見つからない。


今が旬のシナノゴールド。

発送作業もだいぶ進んで、気も少し楽になった。
今年は裂果が多いけれど味はいつも通り美味しいス。

濃厚な味は私たち好み。「ふじ」も美味しいけれど、ゴールドを食べる時は、なんて奇跡的な味なんだろうと毎回思う。種の力は偉大だ。

101018_1504~01.jpg

本年は裂果が多発。

写真は一例。

▼果実下部(おしり部分)の割れ
101022_01.jpg


▼果実上部(つる部分)の割れ
101022_02.jpg

ふじ、シナノゴールドの予備摘果終了。リミットぎりぎりぃ。

ふじの着果量は(私たちが作業した園地では)樹により差があったけれど、やはりどれも例年よりは少ない。ただ、今年被害を一番受けたのはシナノゴールド。実となる中心花(ちゅうしんか)が霜でとことんやられてしまった。側花(そっか)がならせた実で対応するが、これほど側花ばかりを残したことはこれまでにない。味に影響しないと良いのだけれど...

0605d.jpgさて、その着果量。周辺の園地を観察してみたところ、防霜(ぼうそう)ファン設置区域にあるふじの畑は霜の影響をあまり受けていないようだ。防霜ファンとは大きな扇風機みたいなもので、このあたりでは果樹園に、暖地では茶畑でよく見かける。気温が設定温度を下回った時に自動的に風を送る仕組み。これも万全ではないと思うが、今年みたいな気候にはばっちり効果があったのかもしれない。

このようにエネルギを投入して食べ物を作ることが今後はもっと必要になるんだろう。そうなったら(先日の話ではないが)ここはりんごの適地ではなくなる。ここより暖かい霜の降りない土地で、締まりのない味のりんごが作られるのも、遠い未来ではないのかもしれない。

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管理人(ハナイ)
長野県須坂市に住む。夫と共に果樹の世話をして収穫して出荷・販売することが仕事。栽培品目はもも・プルーン・りんご・ぶどう・アスパラガス。趣味はMac、写真、庭に訪れるレア度の低い野鳥の観察、CSで撮りためた日本映画を夫と観ること。仕事以外はわりとインドアである。
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